「傷の治りが悪くなった」と、ある妊婦さんがおっしゃった。
「太ももに大きな傷口が出来た時でさえ、ガムテープを巻いてくっ付けていたら治るほどだったのに」と言いながら、手の甲に出来たかさぶたを見せてくださった。
僕にとっては、実に見慣れた、自然なかさぶたであった。
一方、更に前には、「胎動が異常に早く起こり始めた」ともおっしゃっていた。
「妊娠時期から計算すると、胎動はまだあり得ないはずなのに、エコーではどう見ても胎児は動いており、お腹も蹴ってくる」とのことだった。
まるで、神話の一つに立ち会っている気分だ。
関羽や弁慶のような英雄がまたこの世に生まれるならば、このようにして生まれてくるかも知れない、と思ったりした。
その妊婦さんの人並み外れた生命力を、胎児が、人並み外れた速度で吸い上げているということだろうか。
まぁ、英雄が誕生するかどうかはさておき、世界で唯一の物語が美しく進んでいる様子を見られるのは、嬉しい限りだ。
まずは、妊婦さんの頑固な不整脈が、左腕への痛~い針で、無事に治まって良かった。
弁慶などとは真反対の、僕という貧弱な男も、引き続き経過を見守らせていただこう。
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