2017年2月20日月曜日

ブログ移転のお知らせ


 当ブログの最新記事は、今後、【http://inagaki.ichinokai.info/】へ投稿してまいります。

 「心の平穏を取り戻すための六ステップ」も、そちらで仕上げますので、どうぞよろしくお願い致します。

2017年2月10日金曜日

2016年度『一の会・東洋医学講座』を終えて



 僕は、「経絡治療」と呼ばれるメソッドを、ずっと否定してきました。

 なぜなら、生体が発する情報は常にアナログなはずであり、それを活用した療法も自然とグラデーションのような差異を描くはず。

 ところが、「経絡治療」では、病態が一段階ずれただけで、治療点は膝から手首付近へワープしてしまうのです。

 病を量的異常でなく、質的異常として捉えている証拠ではないでしょうか。

 それでは未病治は出来ないはずなのです。

 例えば、腎と肝との間の異常に接したならば、どちらかの異常に固定化するまで手をこまねくしかない訳ですから。

 
 と、思いきって偉そうなことを書いてみましたが、「経絡治療」への対抗心のお陰で、僕ごとき非才が宝石のような診察法を確立できるかも知れません。


 2016度最後の『一の会・東洋医学講座』(当日の様子はこちらのブログに報告してあります)で公開した脈診は、生体をアナログなまま理解し、アナログな治療につなげることを目的とした診察法です。

 それは、手太陽と手少陽との間の異常に接したならば、それを見極めた上で、単純に養老や会宗の力を借りれば良いということです。

 流注の揺らぎは、そうやって人の病み方を教えてくれているのだと思います。


 何かを否定した以上、責任を持って、対案を示していきたいと思います。

 僕は、鍼灸師だけでなく、ありとあらゆるセラピストのために、歴史に埋もれてしまった脈診法の発掘を続けていくつもりです。

 すべてのセラピストが、自身の施術への無力感や疑心暗鬼から解放され、確証と共に力強く人体へ立ち向かっていけるように。

 「医なき世界」を実現するための、僕に思い付く唯一のやり方です。


2017年1月31日火曜日

「一発で」

 
 
 難病患者さんといえども、その人のすべてを救いたいと望んでいるので、一時的な急変を治められた程度ではとても満足できない。
 
 むしろ、急変を許してしまったことが課題に思え、付け入る透きのない針灸への探求心は高まるばかりだ。
 
 ──などと、自らのストイックさをいささか過剰に演出してみたが、今日のオレは、針灸師になって以来、初めてと言って良いほどの平静さで午後の診療時間を迎えている(声:田口トモロヲ)。
 
 
「声はまだこんなだけど、随分と調子は良いのよ。一発で治ったよ、一発で」
 
 患者さんは、往診の翌日、電話越しに、「一発で」という言葉を数度、その事実を自分でもかみ締めるようにしながら、この僕に伝えてくださった。
 
 難病そのものは、当然、まだ治った訳ではない。
 
 
 達成感を得た訳でも、向上心を失った訳でもないのに、今日の心はやけにおとなしい……。
 
 お世辞でも気休めでもない、本物の言葉に、僕は救われたということなのだろうか。
 
 重みも味わいもある、ありがたい言葉だった。
 
 
 右・太谿・灸 かつ 右・復溜・1番針
 左・内関・灸 かつ 左・郄門・1番針
 
 要・経過観察 ⇒ 缺盆・気戸(特に左)
 
 

2017年1月24日火曜日

妊婦さんの不整脈の再発と、その原因

 
 
 前回の投稿では、妊婦さんの不整脈が針で治まった話を紹介した。
 
 で、当時から二十日ほど過ぎたこの頃、不整脈をまた起こされ、対応を相談されたのだが、そこで贈ったアドバイスが他の人にも役立つかも知れないと思ったので、追記しておく。
 
 
 
 東洋医学では、一般的に、病には三種の原因があるとする。
 
気候の変化
 
感情の鬱積
 
③ 不適切な生活習慣
 
 大雑把に言い切ると、上の通りである。
 
 
 
 不整脈は、日本列島が寒波に見舞われ、雪が降り始める直前に再発したので、①の影響が考えられる。
 
 また、②についても、妊婦さんはこの数週間、努力と集中を要する課題を抱えておられので、その発生と悪影響はあらかじめ考えられた。
 
 しかし、僕が指摘の必要性を最も心配していたのは、③の中の、食についてであった。
 
 
 
 生活習慣上の問題については、惰性や信念が絡むので、アドバイスを贈るのも、聞き入れてもらうのも、難しいことだ。
 
 だが、一度完治していたものが再発したとなれば、完治から再発までの生活の中に、改めるべき何かがあると、無理なく振り返っていただくことが可能になる。
 
 僕は、牛肉乳製品バタークリームにも注意)・脂の多い青魚ニンニクニラ・唐辛子・コショウに気を付けてくださるよう助言した。
 
 果たして、妊婦さんは、このところ、牛丼とサバを愛食していたとのことだった。
 
 
 
 食べ物の好き嫌いは、心や体にとっては何らかの必然性があったりするので、必ずしも改めるべきだとは僕は思わない。
 
 けれど、何らかの不調に悩んでいる人は、不調が強まる前、自分が一体何を飲食したのか、振り返ってみるのが良いだろう。
 
 食材を変えるだけで医療費が節約できるなら、それに越したことはないと、医業者でありながらも僕は思う。
 
 上で挙げたのは、パワフル過ぎて、体に悪影響を与えやすい食材たちである。
 
 食後、数時間で、肩凝りなどの悪化を感じる人も居ることだろう。
 
 

2017年1月17日火曜日

妊婦さんと、不整脈と、左・間使・瀉法の針

 
 
 「傷の治りが悪くなった」と、ある妊婦さんがおっしゃった。
 
 「太ももに大きな傷口が出来た時でさえ、ガムテープを巻いてくっ付けていたら治るほどだったのに」と言いながら、手の甲に出来たかさぶたを見せてくださった。
 
 僕にとっては、実に見慣れた、自然なかさぶたであった。
 
 
 
 一方、更に前には、「胎動が異常に早く起こり始めた」ともおっしゃっていた。
 
 「妊娠時期から計算すると、胎動はまだあり得ないはずなのに、エコーではどう見ても胎児は動いており、お腹も蹴ってくる」とのことだった。
 
 
 
 まるで、神話の一つに立ち会っている気分だ。
 
 関羽や弁慶のような英雄がまたこの世に生まれるならば、このようにして生まれてくるかも知れない、と思ったりした。
 
 その妊婦さんの人並み外れた生命力を、胎児が、人並み外れた速度で吸い上げているということだろうか。
 
 まぁ、英雄が誕生するかどうかはさておき、世界で唯一の物語が美しく進んでいる様子を見られるのは、嬉しい限りだ。
 
 まずは、妊婦さんの頑固な不整脈が、左腕への痛~い針で、無事に治まって良かった。
 
 弁慶などとは真反対の、僕という貧弱な男も、引き続き経過を見守らせていただこう。